意志の「強い」「弱い」ってなんだろう
一念発起して始めたもののなかなか続かないものの代名詞がダイエットと英語学習ではないでしょうか。おそらくそのどちらもわかりやすく努力の結果が目に見えづらいことが原因の1つだと思います。それを解決するために数えきれないほどの方法が考え出され、紹介されてきました(このサイトもですが)。
しかしどれだけ英語学習の方法がどれだけ考案されても、私たちは無意識に実際よりもずっと早く効果がでることを期待してしまいます。学校の試験勉強ぐらいのスパンでPDCA(Plan, Do, Check, Action)を行う癖がついてしまっているのかもしれません。それが英語学習となると年単位で学習の方法と効果を照らし合わせて検討し続ける必要があります。そこで、語学学習を挫折しないために私たちに必要なのは続ける「意志」となります。
以前、私は意志の強い人というとぶれずに初心を忘れずにずっと持ち続けられる人というイメージを持っていて、それだけで自分にはハードルの高いもののように感じられました。しかし、最近折を見て読み返している『独学大全』に、意志について目の覚めるような内容が書かれていました。
志の強さは、それを立てた瞬間にではなく、自身の行為や思考を絶えず志に結び直した、その繰り返しの中に生じる
モチベーションを気力だけで常に一定以上保ち続けられないのは当たり前なのだ、とホッとしました。その代わり、なぜ学ぶのかという動機付けのメンテナンスを定期的にしないと、気づかぬうちに挫折への道を進むことになってしまいます。
英語学習をしようと思い立ったとき、そして実際にトレーニングを始めたときのわくわくした気持ちと比べてモチベーションが落ちてしまい、続けること自体が億劫になるとそんな自分に嫌悪感を抱くかもしれません。SNSを開くと毎日地道に英会話レッスンや独学を積み上げている人の投稿が目に入り、少しずつ挫折に向かっている自分の駄目さ加減に落ち込むこともあるでしょう。
でも、それはあなただけではありません。SNSでそうした投稿をするのも、自分が挫折しないようにフォロワーの人にある意味「監視」してもらう意味があるのではないでしょうか。裏を返せば独学で英語学習を続けることがどれだけ難しいかを知っているからこそ、他の人の目という助けを借りているのです。
心理学には「自我消耗」という概念があるそうです。普段以上の精神的エネルギーを消費した後に難題が降りかかると、セルフコントロールがうまくいかなくなるというもの。英語学習で言えば、頑張って単語を覚えたりレッスンを受けたりシャドーイングをしたりしたものの、当初期待していたほど実力がアップした実感がないという状態に当たります。それに私たちは日常を英語学習だけして生活するわけにはいきません。仕事や人間関係で悩むことがあれば、そのことに精神的エネルギーを費やしてしまい、それ以外に気持ちが回らなくなります。
孫引きになってしまいますが、『独学大全』の中で次のような夏目漱石が芥川龍之介と久米正雄に送った言葉を紹介します。
然し無暗にあせつては不可ません。たゞ牛のやうに図々しく進んで行くのが大事です。
牛のように努力するという表現はさすが夏目漱石です。